2011年08月03日

ガリっとやってしまった、とのことで

このところ、こちら田無周辺も

最高気温が30度に届かない日が続いております。



通常ならばしのげる気温でホッとできるところですが


30度に届きそうで届かない絶妙の暑さの場合


我らが作業場、暗黙のルール的な空気感により


エアコンのスイッチがONになりません。




「もうっ、暑いよー。」叫びたい




太陽様、お願いしますから夏は中途半端な暑さご勘弁下さい。









先日、OEMのお取引先様のお店から修理の件で連絡がありました。


電話でのやり取りで


「お客様から修理のご依頼です。以前、注文靴で納品いたしました靴なのですが…。」


「アッパーの踵の部分が、革が削れて取れてしまい中の白い部分が出てきてしまっている状態です。」


「これは修理可能でしょうか?」



「えっ、革が取れちゃってるんですか?中の白いのが見えてるって。」


「はい、削れて見えています。」



僕はこの時点で、

踵部の甲革がえぐられて月形芯が見えてしまっている状態を想像していました。



「うーん、そこまで深く取れてしまっていたら元のようには戻せませんが、なんとか目立たなくすることぐらいならできるかもですねぇ。」


「いずれにしても実際に見てからでないと。」



「そちらに伺うべき用事もありますので、ではその時確認します。」




ということで、出掛けてきました。




これが実際のキズの状態です。
がりっと.JPG

何、革が削れて取れちゃったって


おどかしますねぇ。




確かにガリっとやってしまって、ギン面がはがれて中の白い部分が見える状態ではありますが、



ご覧いただけるとおり月形芯が見えるほど革は取れちゃあいませんでした。



「ほっ。」





結構深めに甲革は傷ついてしまっていますが


このぐらいのキズであれば


我らが小笠原社長、


がりっと (2).JPG

ここまでは直すことができます。




はい、社長が直してくれました。





手にとって良おーく見なければキズはわからない程度です。



これならばお客様も安心して履いていただけるでしょう。




一件落着です。













修理の靴を預かって、お店からの帰りの道中

いつも通っている駅の自動改札で2回止められてしまいました。


近くにいた見知らぬ女子高校生が

「ドンマイ。」

って小声で言ってました。


担当 根岸
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2011年07月30日

30を45にする話

難題を突き付けられました。




非力な僕にとっては、ですけど。






「30を45にする」、これです。





はあ、何のことだい?





出題1

ヒールの高さが30mm設定の木型を使って


ヒールの高さを45mmに変えて靴を製造しなさい。


ただし、木型を削ってはいけません。


貼りものだけを駆使して足に合った靴を作って下さい。(フルオーダーではありません)







パズルの問題じゃないんだから


こんな風に言われたわけではありませんけど


僕の頭の中はこんな感じになりました。







OEMのお仕事で、この条件での靴作りに取り組みました。




ヒールの高さの設定を変えるというのは


その木型で設定されているヒール高の前後5mmほど(積上げ1枚分)であれば


木型になんの調整も加えなくても


まあ、許容範囲で可能だろうと。




ただ今回のは30を45ですから

木型に調整を加えなくてはできません。



なにも調整せずヒールだけ高くすると

45mm (3).JPG

トウスプリング(爪先上り)がなくなり


つんのめった様な靴になってしまいます。(歩行不可能な靴)





木型のことを知っている方がもしご覧いただいてたら

「そうだね」と、わかっていただけると僕も嬉しいのですが




条件にある、

貼りものはOKだが

削りはダメ

そして足に合わせる。(フルオーダーではない)


これを完全にこなすというのは余程の状況がそろわない限り難しいです。

※フルオーダーではないので「足に合わせる」は厳密にはちょっとですけど。





まず、足のまわり寸が木型のまわり寸より大きくないとできませんもんね。



どれどれ、ぺドカルテ(足型、寸法)からの情報ですと

ああ、木型より足のまわり寸がかなり大きいから削りなしはクリアできるかな。




ただ、ヒール高を変えるには木型の底面に貼りもの調整もしないと

ですから「足に合わせる」はギリギリの線でしょうか。




そうだ、ヒールの高さ以外は通常の九分仕立ての作りで、という条件もありました。


ですから靴の外的変更でヒール高を調整するというのも無しです。






そんなこんな、僕一人の知恵でできるわけも無し


社長にも相談しながら何とか木型の調整は終えました。





木型が決まってしまえば


後はいつもの仕事の中でヒールの高さだけ45mmに変更ですから。


45mm.JPG
ヒール高 45mm



45mm (2).JPG
通常のトウスプリング(爪先上り)確保



無事、靴は完成しました。




仮縫いがないのでお客様の足入れまでは何とも言えないのですが。



ドキドキします。





今回はたまたま出来そうな状況が揃ってたのでお受けできましたが

もちろん何でもできるわけじゃありません、条件が揃わない場合は無理ですので。








いやーしかし今回は難しい内容だったです、


苦労しましたけど勉強にもなりました。












こんなちょっとくたびれちゃった仕事の後は


憧れの先輩女性に


「根岸君、この仕事よくがんばったよね。ごくろうさま。」


なんて労ってもらえる職場環境だったらなぁ




僕はもっと頑張れます。








あと1ヶ月弱で39歳ですが、の  担当 根岸
posted by sinando at 13:37| manufacture

2011年07月28日

その背中、丸まっちゃあいないかい?

包丁というものは正直で


その人の砥ぎの力量を素直に切れ味として本人に教えてくれます。





どんなに高価で素晴らしい包丁を手に入れられたとしても

それを使う人間が

その素晴らしさを引き出し、使いこなせなければ

ただのなまくらな包丁になってしまいますよね。



包丁に限らずどんな道具でも。





と、いっている僕も


小笠原シューズで働けるとなったときは


勇んで、ちょっと高価な革包丁を買いに走りました。





小笠原シューズでは

自分用の作業場を宛がってもらい

専用の天然砥石まで社長にいただきました。





製靴学校では人工砥石で包丁を砥いでいたので

天然砥石で砥ぐなんて初めての経験です。




新品の包丁と新品の天然砥石

ましてや僕の気持ちもピカピカの新品。






今思えば、この三つ


何一つ使いこなせていませんでした。






症状はすぐにあらわれて


3週間も過ぎたころ


包丁を砥いでも砥いでもまったく切れ味が上がってこない


というよりも何も切れない包丁といった方が近かったです。






さすがに困りまして、恐る恐る社長に

「包丁が全然切れなくなってしまいました。」

と、告白。



「ちょっと砥いでみな。」

で、社長の目の前で包丁を砥ぎ


「ちょっと包丁貸してみな。」

で、社長に自分の包丁を見せました。




「まず、刃の付け方が立ち過ぎていて

刃の背中も丸まっちゃてるだろ。

これじゃあ切れっこないんだよ。」




僕の包丁の扱い方はこんな状態から始まりまして


刃の付け方、砥ぎの角度、砥ぐ時の包丁の持ち方、砥ぎ方、砥ぎの姿勢、砥石の手入れの仕方


上げきれないほど包丁の扱いに関しては


ことあるごとに聞いて、教えてもらいました。







包丁で一番怒られたのは、研磨剤の青棒を使った時ですね。


「それ使ってたら絶対包丁研ぐのは上達しないぞ。」





青棒って使うといっとき切れ味上がるんですよね、


でもそればっかりに頼ってると


だんだん刃の背中が丸くなって


すぐに切れなくなる包丁になってしまいます。




趣味的に革包丁を使うならば青棒も便利ですが


靴屋の仕事としてならば包丁に青棒はやめときましょう。








包丁の切れ味の良し悪しは仕事の効率にも密接しています。


包丁は用途によって使い分け、


切れ味を保つには刃の背中を真直ぐ直線的に砥ぎあげる。



革ほうちょう.JPG革ほうちょう (2).JPG

今も包丁を砥ぐのは難しいと感じています。








ちなみに新品の包丁ってこんなのです
新品包丁.JPG

ここから自分の使い良い状態まで砥ぎあげていきます。








人間も包丁も背中がピシッと真直ぐでないと


切れ味は長持ちしないんだなぁ。









背筋.JPG

ね、背中がピシッとしてるでしょ。



担当 根岸
posted by sinando at 19:41| manufacture

2011年07月24日

甲革の裁断面は

いま小笠原シューズで使っている甲革は海外から入ってくるのものがほとんどです。


フランス、イタリア、イギリス、ドイツ


このあたりが中心。



革の色はそのタンナーによってなめし方やギンの仕上げ方が異なるため


たとえば、黒という色を比べても


全て違う黒色です。



でも、よく見ると同じタンナーで同じ色を比べても1枚1枚で微妙に違いますね。



自然なものですから、仕方ないところかなと。





それはそうと、革の裁断面をご覧になったことありますでしょうか?


僕らが通常使っている甲革、1.5mm厚位のカーフは


革の芯までは染まっていません。



裁断した革の裁断面
裁断面.JPG



でも、靴屋さんの店頭で靴をみても


革の断面が染まっていない靴なんて見たことないですよね。



裁断面は靴を製造する過程(製甲か仕上げかで)で染めています。




染め方はいろいろあるんでしょうけど


靴の履き口などは早染めインクやバスコを使うことが多いです

バスコ.JPGバスコ (2).JPG
バスコ

液状ノリと同じような塗り口





ちなみに、昔の甲革では芯通しといって芯まで染まっている革もあったそうです。


製造段階で手間と時間がかかるために無くなってしまったんじゃないかと、社長の推理です。



なめしが違いますがタンニンなめしの革は芯まで染まっていますよね。







包丁での裁断面は平らですから染めやすいですけど


フルブローグなどのギザで抜いたギザ断面や


親子穴をあけたポンチ抜きの〇断面



これらは最後の仕上げで乳化クリームを使って染めています。



クリームで.JPGクリームで (2).JPG

底付けが完了した段階ではこんな状態



ここにクリームを入れていくと

クリームで (3).JPG

片足だけ染めてみました


これは濃茶の革の裁断面を黒の乳化クリームで染めたものです




クリームで (4).JPGクリームで (5).JPG

これで店頭に並ぶ状態になりました。







こんな地味な内容でもよかったのでしょうか?


靴製造自体が地味なんだから


しょうがない、しょうがない。




担当 根岸
posted by sinando at 15:30| manufacture

2011年07月23日

これは光ってないと

僕ら靴屋にとって

製造中の靴に傷を付けてしまうというのは

とても恥ずかしいことです。(恥ずかしいじゃ済まない事ですけど)




作業はいつも細心の注意を払って進めていますが


傷をつけないためには


製造作業中の注意とは別に


日頃の道具の手入れも怠るわけにはいきません。




とくに革に直接あてる道具類(ハンマー、コテ等)の


革に触れる面についてしまったちょっとの傷や凹凸は


革の表面(ぎん面だけとは限らないので)や仕上げた面を傷つけてしまいます。





今回はわかりやすく大きめの道具で


普段どんなお手入れをしているかの例を。




まずはこちら
あんよ.JPG
いちょうゴテ(銀杏の葉っぱに似ているから)

社長や奥山さんたちはあんよごて(赤ちゃんの足に似てるからだそうです)と呼んでます



あんよ (2).JPG
使うのはこの面です


ご覧の通り僕のものは表面が少し曇ってきています


すぐにお手入れしないと




新品のイチョウゴテは

紙ヤスリで番手を変えながら

少しずつ全体をなめらかに整えていきます。



僕は仕上げに青棒という研磨剤を使っています。
あんよ (3).JPG


革の床面にすり込んだ青棒の上でコテを擦ると


あんよ (4).JPG
ピカピカに


紙ヤスリで全体をなめらかに整えたコテは

普段のお手入れは青棒だけで事足りています。




あんよ (5).JPG
顔も映ります






同様に革を直接たたきこむ際に使うハンマー


ハンマーは他にも多岐にわたって使いますので




面がすぐに曇りがちに
ハンマー裏.JPG



青棒で擦れば
ハンマー裏 (2).JPG
ハンマー裏 (3).JPG
これも顔が映ります




使ったら毎回毎回

ピカピカにしているわけではありませんが

こまめなお手入れは大切です。




これは青棒の実演販売ではありません。







奥山さんのいちょうゴテも借りました。


奥山さんあんよ.JPG

ちなみに奥山さんは青棒は使っていません。


細か〜い紙ヤスリで全体を整える感じです。




で、手入れしながら20数年使い続けると


僕らと同じくらいの厚みと大きさだったコテも

奥山さんあんよ (2).JPG奥山さんあんよ (3).JPG

こんな形に





奥山さんは言っています

「あんよゴテは

ちっちゃくなっちゃうと

熱くしてもすぐ冷めちゃって使いにくくなっちゃうんだよなぁ。」








おー、お手入れの果てに使いにくくなってしまうとは




担当 根岸
posted by sinando at 18:22| manufacture

2011年07月08日

大きな靴を作りました

OEMの注文靴でとても大きな靴を作りました。



OEMの注文靴の場合、お店からお客様の足型(ぺドカルテ)が送られてきます。


ですのでOEMの注文靴の場合では、

僕らがお客様に直接お目にかかるということはほとんどありません。




足型に記入されている数値と担当の店員さんの情報から、

木型を起こし靴を製造していくことになります。




今回とても大きな足型が送られてきました。

これまで僕が携わった注文靴では一番大きなものです。




今回は木型を起こすにもとても大きいので


いつもとは違う方法で




まずは基準とする片足を元型として作りあげ
大ラスト.JPG





その元型を木型屋さんに持っていき





元型で両足を起こしてもらいました。
大プララスト.JPG





この両足揃ったものを



再びそれぞれの足型と数値に合わせて調整していきます
大プララスト (2).JPG





ここまでできたら仮縫いです



ご注文のデザインで紙型を起こし



足入れ用の仮靴を作ります。



仮靴はお店に送り、お客様の足入れ後



その結果とともに返送されてきます。




お客様の足入れ後の仮靴
大仮縫い.JPG

担当の店員さんが足入れ結果を


甲革に銀ペンで記入したり、


電話で詳しく話を聞いたりしながら


本縫いに向け調整していきます。



仮靴はこれでお役御免となり


バラされて


使える材料(主に底材)は再び他の仮靴用の材料へとまわされます。








今回は微調整で本縫いにかかることができました。





OEMでの注文靴ですと、こんな流れで行っていますね。




大.JPG大 (2).JPG
出来上がりの靴です



製法はマッケイですが

今回は特別に補強のため

大 (3).JPG

ダブルマッケイ(2重にかけただけです)



木 型…根 岸
紙 型…社 長
製 甲…鈴 木
底 付…奥 山

で、それぞれ担当しました。






比較してもしょうがないですが
大 (4).JPG

24cm 2E の靴と並べてみました




担当 根岸
posted by sinando at 19:04| manufacture

2011年07月07日

間があきましたが

いつの間にか今年も、もう下半期なんですよね。



特に今年は気持ちも、何も、落ち着かないまま



ここまで過ぎてしまった気がしています。










今日は出し縫い前までで止まっていたあの靴の続きです。



さあ、だし縫い。


取り掛かりました、2針くらい。



ちょっと、ですね、今回の、ですね、材料が、ですね、



厚くて硬くて…、



手縫いから機械縫いに、変更いたしました。



常に柔軟な考え方で取り組んでおります、はい





臨機応変、適材適所、好きな言葉です。



ということで
ストーム出し.JPGストーム出し (2).JPG
さすが、パワーが違います

分厚いコバもこんなにきれいに縫い上げていただきました







ドブ伏せしたら、切り回して
ストーム切りまわし.JPG



では、いつもの調子で

ストームコバ.JPGストームコバ (2).JPGストームペーパー.JPGストームペーパー (2).JPG
きやすり

ガラス

サンドペーパー(粗)

サンドペーパー(細か)



水バケの
ストーム水.JPG


後、サンドペーパー
ストーム水とぎ.JPG



ここまではもう、公式のようで





ええ、ここからもいつも通りですが



きれいな面には
ストーム面取り.JPG
一気に面取り




コバの厚みにあわせたコテで
ストームコテ.JPG



しっかり空ゴテ
ストーム空ごて.JPG



目付けも一目ずつつけまして
ストーム目付.JPG
コバの原型があがりました。






この後は
ストーム積み上げ.JPG
積み上げ〜仕上げまで

一気にいきましょうの意気込みで。




担当 根岸
posted by sinando at 22:09| manufacture

2011年06月30日

涼しげに

今日は6月の30日。


まだ6月だというのにもう暑いですよねー。


長野の田舎育ちの僕は


東京の夏の湿気と暑さに毎年苦しめられています、


こればっかりは慣れるってこと無いですね。





例年通り、今年も小笠原シューズの作業場のエアコンは


半分壊れているような状態。


なぜか外気温が上がると止まってしまうという
(冬場は外気温が下がると止まります)


悪循環エコシステム搭載。





なかなかおいそれと新しいものに買い換えられない事情も承知でございます、


「大五郎、じっと我慢の子であった。」で今年も過ごしましょうかね。







とはいえ梅雨が明ければ


さあ、夏本番です。




この夏、できる大人としましては


さりげなく、


いえいえ、意識して


行きかう方々には「涼しげ」をお届けしましょう。






見た目「涼しげ」なキャンバスと革のコンビ


布.JPG


見た目もそうですけど

実際に履いても革靴よりは涼しいのではと思いますよ。



キャンバスの場合、布地ですから

革のように切りっぱなしで切り口は保てません、

ほつれてきちゃいますから。



折り込む、もしくは画像のように

革でパイピング処理をするなどほつれ対策が必要です。



ですからこの製甲、実はけっこう手が込んでいる代物。



布 (2).JPG

裏は革です





これから底付けにかかりますが


底付けも決して汚さないように


キャンバスコンビの靴はとても気を使います。




ましてこの靴、九分仕立ての白出し(だし縫いを染めずに白い糸のままで仕上げます)仕様




いつも通りの手順では白出しは出来ないので


工程も変更してどうのこうのやらねばならぬのです。





実は久しぶりの白出しです、

以前やってたときのことを自分の工程メモで振り返って

記憶を甦らせます。


仕事のメモってとても大事だと思います。











元のキャンバス地はこんな

布 (3).JPG

ここに必要なパーツを型入れします。


ちゃんと布の目も考慮して。







キャンバス地以外に

なんだか古い生地が出てきました

布 (4).JPG

どうやらナイロン地のようですが

これもかつては靴にしていたとのことでした。

へー、色々あるんだなぁ。








お手入れもなかなか気を使う靴かもしれませんが

「涼しげに」

この夏、いかがでしょう。





担当 根岸
posted by sinando at 22:37| manufacture

2011年06月29日

こくりぼう

なんてことない棒の話で恐縮です。



こくり棒って名前の

表面がつるつるした棒。


ちゃんと名前がついているので靴の道具として認められているはずです。

ですが、「こくり」という語源も意味もわかりません。



「昔っからそう呼んでるからなぁ。」

これで終わっちゃいます。




そんなときはネットで検索してみます、

どなたかご存知かもしれませんから。



結果、どうやらサトイモを洗う道具で同じ呼び名のものがあるようなのですが


「こくり」とは昔の方言で「洗う」という意味だそうです。



それだと靴のそれとは違いますね。

サトイモのそれは見た目も使い方も違いました。





靴のこくり棒のほうは


出し縫い後、ドブ伏せをした本底の表面をきれいにならすことに使っています。


工夫でもっとほかの使い方をしている人もいらっしゃるかもしれませんが


現時点で、僕らはそれにしか使っていません。



こくり棒ってこんなのです
こくり (6).JPG
ちゃんと靴道具屋さんで

「こくり棒ください。」

で、購入したものです。



ただハンマーの柄でも、用を成さないことはないです。



作業としては実に単純で

まずは、ドブ伏せです
こくり.JPG
伏せるところにはノリを塗ってあります


本底のギン面を濡らして
こくり (2).JPG


ハンマーの先で少しずつ伏せていきます
こくり (3).JPG


伏せ終わると
こくり (5).JPG
どうやってもハンマーの跡が残ってしまいます


これを消すために

ハンマーで叩き込んで平らに
こくり (4).JPG
これでもまだハンマーの跡は消しきれません



ここでこくり棒の登場
こくり (11).JPG
まあ、単純に力をこめて

平らになるよう擦っていくだけですけど



でも、擦るタイミングってのがありまして

ただ、その底材料によって違うのですが
こくり (7).JPG
この材料で言えば濡らした表面が

9割ほど乾いたところがちょうど良いんです


そろそろ良い頃合い


下半分だけこくり棒でならしました
こくり (8).JPG
ならしたとこは艶が出て平らに近づいていきます



この作業を全体に施し

艶と平らな状態を作ります
こくり (9).JPG


一目瞭然ですよね
こくり (10).JPG


ちなみに艶が出ることは意図しているわけではなく


大事なのは表面が平らになること。



最後はこの艶が出たギン面を一皮剥いて仕上げていきますから


この時点の艶はしっかり全体が平らにかけられたかの目安にするぐらいですね。




この時点で底面をしっかり平らにしておかないと

最後につじつまあわせで平らな底面を作ろうとしても

それは出来ませんです。







こくり棒はこんなことですから表面がつるつるしていることが大事。





以前、社長がおもむろに

「これ、こくり棒に使ったら良い。」

って、炬燵の足みたいな棒を青木君と僕にくれました。



その時はありがたく頂戴しましたが


ねぇ。



そういえば青木君は100円ショップでパスタを伸ばす棒を


「こくり棒にどうだ」


って、買ってきてましたが


炬燵の足も、パスタ伸ばしも使ってるとこ見たことないなぁ。





やっぱり、こくり棒はこくり棒なんでしょう。




担当 根岸
posted by sinando at 00:19| manufacture

2011年06月25日

シームレスで

シームレスで踵周りを、


「おお、なんて凄技の極上な誂え靴。」


って、これちょっと大袈裟ですよね。




紙型を正しく裁っていて、甲革も余程悪い場所で型入れしていなければ



シームレスでの踵周りはつり込みにおいて



特に難しい作業ではありません。



全く接ぎのないホールカット(一枚甲)は別として


踵周りだけがシームレスって場合ですけど。



「おい、そんなこと書いたら有難味が無くなるだろ!」


って、どこかの誰かに怒られそうですが




僕らの同業の方々にしてみれば

「シームレスなんてその程度のもんだよ。」

って、ご承知のことですもん。


同業者でこの点について文句言う人はいないと思います。




それこそ、踵が縫い割りで

その縦ラインを真直ぐヒールまで下ろすようにつり込むほうが

よっぽど難しいなんて場面いくらでもありますからね。




今日はそのシームレスヒールの釣り込みをしたので、その紹介です。




これ、
シームレス.JPGシームレス (2).JPG
デザインはサドルシューズで、踵シームレスです。



では、つり込んでいきましょう。


頭を3点止めした後
シームレス (3).JPG
踵を下ろしました。



紙型さえ合っていれば

釘一本だけで仮止めしていても

まとめていく下の部分にはそれほど余剰分を感じません。



ちなみにこの紙型を裁ったのは西川女史です。





シームレス (4).JPG
ただ、この履き口

この段階では木型に完全には沿っておらず

木型と履き口の間に少し空間があるのがご覧いただけますでしょうか?



これを、甲革・裏革の引き加減で

木型に沿わせていくのも底付け担当の技術的なお仕事の一つ




仮止めしていきます
シームレス (5).JPG
甲革・裏革のワニで引く力を変えていくことで

木型に沿わせていきます。


このへんの微調整が手づり込み(手づり)の良さのひとつでしょうね。


紙型が合っていれば難なく進められます。


シームレス (6).JPG
シームレス (7).JPG
仮まとめ完了。

この時点で踵周りの余分なしわはほぼ抜けています。



ね、たいして普段と作業的には変わらないですよね。





「おっ、そうは言っても気がつかれた方もいらっしゃいます?」



はい、

「通常は履き口を定位置に固定するため釘を踵に一本打ち込んでいます。」



今回、シームレスを活かすためそれをしていません。


ぬい割 (2).JPGシームレス (8).JPG
この釘です



この点さえ気を使ってつり込めば


シームレス (9).JPG
釘で止めなくても

ちゃんと印通りに履き口の位置を止めることが出来ます。


これは経験と共にちゃんと頭を使った上での仕事です。



おっと忘れちゃいけない、
シームレス (10).JPG
はじめは空いてた隙間も

最後はビッチリ木型に沿わせてます。




気を使う部分はいつもよりちょっと増えますが


そんなこと黙々とやってればいいんです。







なんて、いちいち紹介してるじゃねーかの、 ダメ担当 根岸
posted by sinando at 23:55| manufacture

2011年06月21日

黒インク

底付け担当としてこれまでも度々、

黒い靴は難しいとこぼしてきました。



具体的に何が難しいのかといえば

色の着いていないヌメの底材に

「真黒を作り出さないといけない。」

これに尽きます。



黒なんて一番強い色なんだから

どう転んだってしくじらないでしょうに。




僕もかつてはそんな風に考えていました。


でも違ったんですよね、

「黒っぽい」と「黒」と「真黒」




正直なところ今でも「真黒」は出せていないのかも、です。



いまだに黒の発色、艶感を社長に指摘されることがあります。



小笠原シューズで初めて教わった黒の染色は


下地剤(黒)、ローインク(黒)、上塗り剤(黒)、アイン蝋(黒)、仕上げワックス(黒)


5段階の手順を踏むものでした。


これだけの黒を重ねて「真黒」をつくり出していくのです。



この手間にはびっくりしましたです。





ただこれも基本となる方法なだけで


これを応用していかに効率よく発色させ、艶を出すか


各々がずっと研究しています。



ですから、出来上がった皆さんの靴はよく観察して見ています。


「おっ、これいいな」


と思ったら直接聞けるのがありがたいところ。


皆さん快く教えてくれますから、そこからまた新しい発想が まれ に生まれます。


まあ、新しいのはそうそうないんですけどね。





ところで、ここにきてピンチが訪れました。


とうとう、僕の手持ちの黒のローインクがなくなってしまいます。


以前も書きましたがローインクはもう製造されていません。



何でずっと色出しの研究をしなきゃならないかといえば


こういった製造中止の材料が増えているといったことも要因の一つですよね。




一足お先に奥山さんたちはローインクから

資材屋さんが代替インクとしてお勧めするものに切り替えて使っていました。


ただそれが、まあ扱いがデリケートで難しいやつでした。



ベテラン勢がてこずるインクに切り替えるの嫌だなー


って思ってましたから


そこはね、暫く前から何か使えるものはないかと考えていました。





そんな中であるものを応用したインクを発想。


でもなあ、そんなのやっぱり特別に作って貰わないと手に入らないだろうなぁ。


なんて考えていたところ、



浅草で社長と資材屋さんをまわっていたら


あっさりあるじゃないですか発想したのとそっくりのものが


用途は違うのかもしれませんが


先人は気がついておられたのでしょうかね。



ということで、社長にお願いして買ってもらいました。




あとは試してどうなるか?




黒ロウ.JPG



担当 根岸
posted by sinando at 00:01| manufacture

2011年06月16日

裏革の紙型

紙型を裁つことも

必要に迫られ本腰を入れて取り組みだしてからは

紙型アレルギーのように

かつてはあれほど重くあげるのに苦労した腰もまずまず軽くなり

(※紙型とは関係ありませんが、おかげさまでぎっくり腰はほぼ良くなりました。)



頭を悩ませながら

紙型も数を経験することでいつかは見えてくるであろう

「光明」を心の支えに

日々、社長の厳しい目の元にさらされながら精進しておるところであります。




勢いに任せて突き進んでいく紙型作業での道中

僕をふと立ち止まらせる

裏革(ライニング)の存在。




ようし、いっちょかっちょいい線を見つけ出して

一旗上げたろうかの甲革のデザイン線とは異なり


ほとんど注目はされませんが

実用性重視、そこにそれが存在する意味が問われる裏革の接ぎの線。


靴で実際に足に触れる存在であるのは裏革で

甲革の紙型と裏革の紙型とでは

一足の靴を作り上げていくという共通の目的のなかでも

線における考え方と意味が違うということ。




こういうことは特に意識せず紙型を裁つのであれば

さほど悩むこともない話で

教科書通りやってればそれはそれで靴にはなります。



でもそれではね、靴屋を仕事としてやっている以上

ましてや小笠原社長の目の元でやっている以上



「この線で接いじゃったら、どうなるだい?」

「この接ぎはあとで表に出てくるんじゃないのか?」

「足あたり考えたら、ここで接ぐとちょっとどうなんだい?」

「甲革の素材も厚みもちゃんと頭に入れておいた上で裏革の紙型を裁たなきゃだめなんだよ。」

「ここが一番負荷かかるところなんだから、ここで接いじゃダメなんだよ。」



おっと、これまで言われてきたこと全部書き上げていたら明日になっちゃいます。




ずっと紙型を裁ってきた社長にしてみれば当たり前のことを

僕が気がつけていない、出来ていないというだけのこと。



だから何度もやり直して、で覚えていきます。




なにクソで続けられているのは、

やらされてる感を感じていないからなんでしょう。






そう、紙型を裁つ上で大事なこと

ひとつ気がつきました。



紙型を裁つには基本的な製甲の手順を理解していないと出来ないということ。



こういう紙型を裁ったら製甲はどういう手順で行うか、

それを頭の中で描けていないと

「こんなもん、どうやって縫うんだよ!」

ってね、怒られちゃう。



あと、

ここには18種ミシンしかないとか、ポストミシンがあるとか

現場の環境、ミシンの特徴、構造を理解していないと

縫うことが出来る線、縫うことが出来ない線ありますからね。



これって一人で全工程、完成までを一通り製靴学校で勉強できたからこそ

の、ことですよね。

おやおや勉強した甲斐があったってもんですな。




結局、今僕があなたがどの工程を担当していたとしても

やっぱり仕事は最後まで全部繋がっているのです。







裏紙型.JPG


つい、靴屋さんでは靴の中を覗き込んで

お知恵を拝借ってね。


担当 根岸
posted by sinando at 00:59| manufacture

2011年06月04日

本底だけの薄いコバ

あれから毎日の整骨院通いで

針、お灸、痛いけど効くマッサージを駆使していただきまして

なんとか仕事場にも早期復帰できました。



靴を作るということにおいて、いかに腰が重要なのか!

再認識させられる日々でございました。



一日中低い椅子に腰かけているだけでも腰には負担ですからね


これからは体のメンテナンスも意識しながら仕事をしていかなければと

気がつかせてくれる出来事でした。


みなさま、何事も体が資本です。





きょうは注文靴で製作中のオペラパンプス。


の、張り出しの無い薄く仕上げるコバにつきまして



今回ご注文いただいているお客様の足は、

僕がこれまで木型作成に携わってきた中で最も細くて薄い足。



既製品では実足長で合うものがなく、

極端にサイズダウンした靴やスニーカー等はレディースを履いているとのお話でした。



タキシードを誂えたのに合わせてオペラパンプスもということでご注文いただきました。




仮縫いを重ね、いまは本縫いにとりかかっているところです。



底付けはマッケイ製法で、ソールは張り出しがほぼ無い、薄コバ仕様。




どぶ伏せ後の切りまわしが終わった状態から

オペラコバ (5).JPGオペラコバ (6).JPG

マッケイ製法で薄コバですから押縁はまわさずに

本底のみでコバを作っていきます。

コバの張り出しも仕上がり時でコバゴテの爪分ほどしか出しませんので

切りまわしも気を使いながらつめていきます。

まして今回、エナメルの革ですから

普段とはちょっと勝手が違う部分もあります。






押縁をまわさない靴でやってしまいがちなことは

中物の調整をおろそかにしてしまうことで

底面が異常に丸みを帯びた不格好な靴ができてしまうこと。

そうしないよう気をつけてます。







オペラコバ (7).JPG

切りまわしたら面ヤスリで本底に残っている余分なノリを掃除するのと同時に

厚みも程良く調整していきます。

面ヤスリは初登場でしょうか?

形から「なぎなた」とも呼ばれる道具です

画像のものとは形の違うものや、粗さが違うものもあります



面ヤスリを随所で使いこなせるようになってくると

靴の各部のキメ所が美しくなってくる様な気がしてます。





ここからは通常のコバの作り方と一緒で

オペラコバ (8).JPG

キヤスリ




オペラコバ (9).JPG

ガラス




オペラコバ (10).JPG

サンドペーパー(粗)




オペラコバ (11).JPG

サンドペーパー(細かい)



ただし、コバに張り出しがない分

常に甲革の間近での仕事ですから特に気を使っています。


オペラコバ (12).JPG

ペーパーまで終わったら、包丁をよく砥いで(通常より気持ち丁寧に)

バリを薄くとっていくようなイメージで面取りをします




オペラコバ (13).JPG


この場合、ウエルトや押縁の面取りとは違い

本底の床面を面とりしていくわけですから

包丁が切れないと鋭く均一な面が出来上がりません。





コバゴテはコバの厚みに合わせ薄いものを使って空ゴテをかけます

オペラコバ (14).JPG





空ゴテをかけました

オペラコバ.JPGオペラコバ (2).JPG

オペラコバ (3).JPG

内ふまずは丸コバです


オペラコバ (4).JPG

上から見るとコバはほとんど見えません





最後着色して蝋を入れるともっとキリッとしますね。




担当 根岸
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2011年05月18日

足元を見れば

以前、奥山さんから聞いたことがあります。


「足元を見ればその職人の力量が大体わかるもんだよ。」と



えっ、やはり作業中もピカピカの革靴を履いていないとダメなのかっ!





いえ、そういうことではなかったです。


だって小笠原シューズで革靴履いて仕事している人なんて一人もいませんもん。





その職人さんの足元に落ちている革屑をみれば力量がはかれる、ということでした。




主に底付けに関してのお話ですが


革靴に使っている本底といわれる革は


その名の通り底に使う革で、常に地面と接して擦り減るものです。


ですから、柔らかいとすぐに減ってしまいますので(柔らかくても繊維が密なものはもちます)


ほとんどのものが硬く繊維が密な革に仕上がっています、厚みは5mmといったところでしょうか。




この材料を革包丁で裁って靴底として成形していきます。




たとえば、すくい縫いの靴でしたらウエルトと貼り合わせるわけですから


ウエルト3mm + 本底5mm = 8mm


約8mm厚の硬い革材を革包丁で切りまわしていくことになります。




ここでわかってしまうのが、包丁の砥ぎと包丁の使い方です。



刃の角度や刃の付け方、


切れる包丁に砥げていないと力ばかりを使うことになり

思わぬケガをしたり

甲革に包丁傷を付けてしまうなんてのは最悪なことですもんね。




包丁の使い方も、引き包丁、突き包丁、表、裏


刃の使い方で切れ方が全く変わってきますから。



包丁は使う用途によって数本を使い分けています。


形や刃の角度を使いやすいように砥ぎ、幅も違うものにして。



最低4本くらいは持って、使い分けないとダメだなといわれました。




正しい包丁の使い方、こればっかりは靴の仕事の基本中の基本

とにかく体にしみ付くまで厳しく厳しく指導いただきましたです。






ダメな包丁使いは

切りまわしたコバの断面がガタガタ、ボサボサ

切れない包丁だとちょこちょこ細かく切ることしかできずに断面が均一になりません

足元には細かい革屑ばかりが…


コバを上から見た時に綺麗なラインに整っておらず

無意味に出てたり引っ込んだり凸凹


何より時間ばっかりかかってしまってダメなんです。




こんなこと書いてる僕も含めまして、はじめは皆そこからですから。


根気よく、一つ一つ意識して考えながらやり続けるしかないのですね。






奥山さんの見てきた腕の良い職人さんは

足元の革屑が一つ一つ長く大きく

包丁使いに迷いがないのであっという間に切りまわしが終わるそうです。



こういう基本になる仕事がきっちりできてる職人は


仕上げた靴にもそれらの要素が必ずあらわれてくると。







あくまで僕ら靴製造屋としての話です。





足元.JPG足元 (4).JPG足元 (2).JPG足元 (3).JPG





僕の足元、

足元 (5).JPG

奥山さんはどう見てるんでしょう?







怖くて聞けない。


担当 根岸
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2011年05月12日

つりこみにおける縫い割り

製甲の仕事の中に縫い割りというものがあります。


縫い割りと聞いてパッと頭に浮かぶものは

靴の踵部の後ろ側にある縦の接ぎでしょうか。


ぬい割 (5).JPG

これですね


製甲の仕事の内容としては文字通り

ミシンで縫ったその部分を製甲ハンマーで割るように叩いて形作ります。


出来上がった製甲では
縫い割.JPG

表側


縫い割 (2).JPG

裏側

縫い割り部分をテープで補強してあります



製甲における縫い割りの説明はまたの機会といたしまして


今日はつりこみにおける「縫い割り」を取り上げてみます




製甲の技術の縫い割りが、何で底付けのつりこみに関係があるんだよ?


僕も当初は「?」でした。



小笠原シューズで働き始め、

いよいよ「九分の靴を一人でまとめてみなさい」と。


緊張の中、それまでの持てる知識を全力で出し切ったかも知れません



が、結果は「×」



社長の目でそのときの「×」な部分をあげられたらキリがないのですが。



その中に僕の頭の中で全く想定できていなかった指摘が


「縫い割りがちゃんと縫い割れていない。」


僕の頭の中は

「?」


だって縫い割りって製甲での仕事でしょ、僕はつりこみをしたんですよ


の、顔をしていたんでしょうね、そのときの僕。



僕の表情から

こいつ言われている意味がわかっていないな、と判断されたのでしょう。



社長が説明してくれました。



「縫い割りはもちろん製甲の仕事の一つだけれど、

靴として縫い割りを完成させるのはつりこみなんだ。」と



踵の縫い割り部分はつりこみの段階で

左右にきっちり縫い目を割るようにハンマーで叩き込み

月型芯としっかり密着させ

文字通り縫って割った状態を木型のラインに沿って形作ることで完成する。


でなければ、わざわざ縫い割りという技術で縫っている意味がない、と。




社長に説明してもらってはじめて知りました

「縫い割り」ということ。





では画像とともにつりこみでの縫い割りの完成までを


ぬい割.JPG

まず、縫い割りの縦ラインが曲がったりしないよう力加減しながら仮まとめ

この段階ではまだ縫い割り部が浮いたような状態で月型芯とも密着していません。

画像からなんとなくしまりがない感じ、わかりますかね。

ここから縫い割りのミシン目、一目一目をきれいにだすことと

芯と密着させつつ革をしめるため

左右方向に割るようにハンマーで叩き込みます。



ぬい割 (2).JPG

先ほどより叩き込むことによって

革がしまり木型のラインもしっかりと現れてきました。


こうなってくると叩いている時の音もはじめに比べ硬い音に変化してきます。



もう一度しっかり叩きながらまとめなおして

ぬい割 (3).JPGぬい割 (4).JPG

完成です。





こんな部分誰も気にして見ないかもしれません、


けれどもその仕事にはわざわざやっていることの意味があって


わかってやっているのと


わからないままやっているのでは


その先には大きな違いがありますよね、きっと。






小笠原シューズではこんなものづくりをしています。







もうこんな時間になっちゃった。


担当 根岸
posted by sinando at 00:34| manufacture

2011年05月05日

ミシンのローラー押さえ

これは鈴木さんがあげた製甲の一部拡大ですが

ローラー跡.JPG

よく見るとミシンのステッチの横に並行して

変な跡がついていますよね



これは靴に仕上がって店頭に並んだ時点では消えている(コテで消している)

ミシンで縫製した時につくローラー押さえの跡です



製甲用のミシンには縫製の時に革を押さえるローラーがミシン針の横にあります


鈴木ローラー.JPG

これは鈴木さんのミシンのローラー押さえですが

標準より大きめのものがついています



西川ローラー.JPG

こちらは西川さんのミシンですが

これが18種ミシンの標準サイズのローラ押さえですね




ローラー押さえは径が大きい方が安定して押さえられるようで

直線的に縫うことに向いているものが大きいもので

曲線や回転に向いているのは径が小さいはど小回りの扱いがしやすいそうです



靴の製甲の場合は立体的に回転させながら縫ったり曲線も多いのですが

革の重なる部分も多くしっかりその厚みを押さえてくれる安定性も必要


どんなローラ押さえを使うかはその人の好みだったりしますけどね



ローラー押さえはミシン針からの距離や角度を調整できる仕組みになっています

そこはそれぞれが自分好みに調整していますので

勝手に人のミシンをいじったりしてはいけないのです

製甲の仕事の良し悪しに関わる重要なポイントでもありますしね





17種ローラー.JPG

これは17種ミシンですが

もともと鞄などの縫製に使うものなので

直線縫いが安定する大きめのローラー押さえがついています


小笠原シューズでは靴のステッチの太い糸用に使っています



ギザローラー.JPG

こちらはギザ抜き用の18種ミシンです

これは小さいローラー押さえをつけています


一枚の革をギザで抜くためだけですので

安定性よりも小回り重視の設定ですね






と、ここまでローラー押さえを紹介しましたが



社長抑え.JPG

これ、社長の製甲ミシンです(撮影時、針が折れていました)


ローラー押さえがついていませんよね


社長はローラーではない押さえで製甲をします



ずっとこれでやってきたのでこれに慣れてるから使いやすいんだそうです



もともとは製甲ミシンの押さえはこれだったそうです

ローラー押さえが出始めたのは動力(モーター)ミシンができてきた頃から

今は動力ミシンが主流ですから

当然僕らはローラー押さえしか知りませんでした



社長もローラー押さえは持っていて
社長ローラー.JPG

試した時期もあったそうですが

革がしっかり押さえられて使い慣れたものに戻したそうです





社長抑え (2).JPG
押さえの裏にはプラスチックのパーツがついています


ただ、もともとはこのプラスチックは付いておらず

そのまま金属の押さえだけでスムーズに使えたそうです



時代とともに甲革のぎん面の仕上げ方が変化してきて

金属の押さえのままでは甲革のぎん面をなめらかに滑らなくなってしまったっそうです

そんな事情からプラスチックの後付けパーツがミシン屋さんで売られるようになったとのことでした





道具のひとつとってもまだまだ僕らの知らないこと

すでに知らないまま無くなってしまったもの

先輩方に今のうちに聞いておかないと、ですね。


担当 根岸
posted by sinando at 18:26| manufacture

2011年05月03日

ライトアングル

きょうはスキンステッチの中のひとつ


ライトアングルをとりあげてみます。




まず、ライトアングルって言葉

直角という意味なんですね、知らずに過ごしていました。


こんな調子ですから、ちゃんと説明できるか心配です




製甲のあがったものから見ていただければ、ね

ライトアングル.JPGライトアングル (2).JPG

そうです、このモカ縫いです。




ライトアングル (3).JPG

縫い上がったモカの裏はテープで補強しています






モカの革はまず表面から針をまっすぐ刺し

そのまままっすぐ裏に貫通させるのではなく

良い加減で横に向かって進路を変え

横の革の裁断面から針を出します


この穴あけに使う針は専用に加工した南京針です


ライト.JPG

作業はこんな感じで一針一針先に穴を開けてしまいます


この穴あけは慣れないと

ぎん面が裂けてしまったり(その時点で一から新しい革でやり直します)

断面から出す針の位置が一定にならなかったりとで(縫い上がったときモカの革とサイドに縫い合わせた革の断面の高さが揃うのがきれい)

綺麗なモカ縫いに上がりません



やはり西川さんもライトアングルに取り掛かるときは

ライト (2).JPG

このように慣らし運転をしてからですから



モカの準備ができたら縫い合わせていきます

ライトあ.JPGライトあ (2).JPGライトあ (3).JPGライトあ (4).JPG

このときの糸はナイロン糸を使って

縫い針は木綿針中くけを加工したものを使っています


麻糸でもよいのですがお手入れを怠ってしまった靴では

屈曲部の麻糸が切れてしまうことがありましたので


強度の面でナイロン糸を使っています

ナイロン糸でもお手入れは大切です





余談ですが

以前、新宿の伊勢丹にエドワード・グリーンのモカ縫いを担当されている方が実演でいらしてました。


たまたま誰も見ている人がいなかったので

ライトアングルのモカ縫い中、悪いかなと思いつつちょっと話しかけてみました、

日本語(カタカナ)で。



そしたら「英語は喋れないか?」と英語で聞かれました、たぶん


私は「英語は喋れません。」とカタカナとジェスチャーで答えました



そんなやりとりをしていたら英語の堪能な店員さんが現れ

通訳してもらって話ができました。



その方はとくにモカ縫いをやりたかったわけじゃないけど

たまたま担当を命ぜられたからずっとやってるそうです。

でもライトアングルは2〜3人しか今はできる人いないんだよって。

せっかく日本に来たのにこれだけの数は仕上げてこいと言われてるからって

話しながらも手は止まらずにせっせと縫ってらっしゃいました。

早く終わらせて観光するんだそうです。



モカ縫いに使っていたのは麻糸で、チャンの代わりのワックスで強度をつけたものです。

泊まっているホテルのドアノブに麻糸をくくりつけて

ワックス引きをして糸作ってきたんだって言ってました

縫い針はイノシシの毛を使っていました。


三角形に切った木材を腿の上に置き

その木材の直角を使って

その上で革をわげさで固定しながらモカ縫いをします。


驚いたのはモカに下穴を開けていないこと

全て目分量でモカに穴をあけながら縫い上げてしまうんです。

正確でそして早い。


だから2〜3人しかできないってことだったんですね。



いやー驚きました。





三角形の木材を使って縫うことは製靴学校でも教わりました

そのほか木型の上に釘で仮止めして縫うという方法もあります



三角形の木材がなかったので

西川さんはこんなのを代わりに使ってます

ライトアン.JPG


ライトアングル

なんとなくご理解いただけました?




百聞は一見にしかずでしょうね、あー説明するのって難しい。


担当 根岸
posted by sinando at 12:30| manufacture

2011年04月27日

ミシンの調子が…

製甲ミシンの調子がおかしくなってしまいました。



小笠原シューズでは製甲担当も底付担当も

自分の道具は自分で調整して使うというのが基本です




ただ今回は何だかおおごとなのかな? の雰囲気




鈴木さんの製甲ミシンが調子悪くなってしまいました。

糸調子がどうにも狂ってしまい、本人はお手上げとのこと



そんな場合は「専門家のミシン屋さんに修理依頼を」

となってしまうところですが




小笠原シューズの製甲のことなら


はい、社長です




「ちょっと見せてみ」


ということで

ミ調整.JPG

社長が調子を見てみます




無言のまま、何か調整をはじめました

ミ調整 (2).JPG


再び試し縫いをしてみて

みし.JPG


また調整に

みし (2).JPG


かと思ったら


未調整 (3).JPG

分解がはじまってしまいました



未調整.JPG


僕は詳しいことは判らなかったのですが



どうも釜の中に問題があったらしく


未調整 (2).JPG
これが18種ミシンの窯の中



はじめはボビンとボビンケースの調整を行ったのですが

それだけでは直らず

釜の中を調整するため分解に至った模様




製甲ミシンはミシンの構造自体は簡単なので

調整する個所や消耗箇所は

長年の経験でわかってくるそうです




「何でも自分でやってみて初めてわかるもんだよ。」 


「やってダメなら専門家にお願いすればいいんだから。」


「そうやって覚えていくんだ。」


と以前おっしゃっていました。




ただ小笠原シューズにミシン屋さんが修理に来た場面は

これまで見たことがありませんけど







釜の調整も終わり、さて元に戻すか


何だか社長が慌ただしく動いてます


「どうかしました?」


「ネジがない。」


「ここに置いといたはず…」



で、ひと通り大騒ぎして

単純に下に落ちていただけで見つかる。






この探し物のパターン、小笠原シューズでよくあるよねって

7年目の経験で僕はわかってきました。





あ、もちろんミシンはちゃんと直りましたので。



小笠原シューズ連休のお知らせ

5月1日〜5月5日、お休みとなります

よろしくお願いします


担当 根岸
posted by sinando at 19:10| manufacture

2011年04月20日

出し縫い前まで

スギ花粉、だいぶ落ち着いてきましたでしょうかね?


僕は花粉症とお付き合いして、今年で3年目になりましたが

年々症状が悪化している気がします


僕の場合とにかく痒いんです、目と口の中の上顎の奥の方が(指で掻けないとこ)。


耳鼻科で処方してもらった薬を飲んでいるので

なんとか生活していますがこの時期は憂鬱ですね。


涙と鼻水を垂らしながら靴作っています。


小笠原シューズ内では青木君と僕だけですね花粉症。






さてさて、そんななか少しずつかかっているコードバンの靴。

やっと出し縫い前までたどり着きました


前回はすくい縫いまで終ったところでしたが

その後、中物をつめましてミッドソールを貼りました



今回使ったミッドソールはちょっと薄目で2mm厚のもの

相中(あいなか)という商品名?で社長は資材屋さんに注文していますけど


それを使用


相中.JPG相中 (2).JPG
もちろん革ですけど

すでに両面バフをかけてありそのまま使えます

のりで貼ってざっと切りまわしました。


この状態のところに通常使っている5mm弱の本底を貼りつけます。





切りまわし (2).JPGキリマワシ.JPG
本底も貼って切りまわしました


この状態でコバの厚みは10mmです


ストームウエルトでコバの張り出しも強くなりますから

10mm厚のコバでもじゅうぶんに存在感ありますよ
切りまわし.JPG

切りまわしをイメージ通りやっておかないと

その後の出し縫いでふらついたりしますのでね

仕事は全部繋がっていますから




切りまわしたコバに出し縫いのあたりをつけます


今回は僕の持っているウィールの中で一番目の粗い8番で
8ウィール.JPG


コバを水で湿らせたら

全周ぐるっとウィールをまわして跡をつけます

出しピッチ (2).JPG
こんな感じで



銀ペンで出し縫いのラインをつけまして
出しピッチ.JPG

ちなみにこんな線をひかずに体におぼえた感覚で縫えちゃう人もいますよ(奥山さんとか)




後はどぶを起こして、出し縫いの手前まできましたね
ど.JPG





とここまではすでに出来ていましたので連続的に記事に出来ましたが

さて、出し縫い以降はこれからかかっていくことになります

この靴に関しての記事は少々間が空いちゃうかなと。

少しずつ時間を作って作業進めます。






担当 根岸
posted by sinando at 19:28| manufacture

2011年04月13日

ストームウエルトですくいました

前回のその後ですね。


つり込みが完了したコードバンの靴ですが

お約束した通りにストームウエルトですくい縫いをしてみました。




今回使った木型はあたまが丸く


そこにコードバンという厚みのある革を甲革に使いましたので


柔らかい雰囲気です。




よし、紳士靴ですがちょっと可愛げのある靴に仕上げたろーと。




ストームウエルトも丸みのタイプを使いました。






ストームウエルトのすくい縫いといっても


縫い方はいつもとさほど変わりません



ただ、ウエルトに厚みがあるのと

今回はたまたま手元に残っていたストームウエルトの革質がいまいちだったので

水にたっぷり漬けて柔らかい状態にしてから縫いました。



中底はストームウエルトで縫う用の設定値で加工が必要です

むしろ普段の中底加工の方が手が込んでますかね





では縫います
ストすくい.JPG

すくうピッチもいつもと変わりません(8〜9mm位です)


ストすくい (2).JPGストすくい (3).JPG

この丸いのが付いてるタイプのストームウエルトです



うーん、大変なところは

全周縫いのダブルウエルトなのでいつもより縫う量が多いです


ストすくい (4).JPG

縫えましたね


ストームウエルトは平らにすくえていないと

表側に見えているウエルトが波打っているのが目立ちます


「この、下手糞め。」

って世間様にアピールしてしまう結果に。





こういうのは「味」ってもんじゃないと思ってます



ストすくい (5).JPGストすくい (6).JPG


全周縫いの場合は

麻糸にすり込んだチャンが縫い終わる最後まで効いていないとダメです。


糸が弱くなって切れたり

せっかくの縒りがほぐれてきたりで



すくいの強度も縫う効率も悪くなってしまいますよね



マメに、季節に合った活きの良いチャンを作って使うのがいいです。






この続きも近いうちに、ミッドソールを入れた厚底仕様で。









担当 根岸
posted by sinando at 19:39| manufacture